会社がオフィスや車を借りる。
「毎月払う賃料を、そのまま費用にすればよいのでは?」と思うかもしれない。しかし、IFRS 16では、多くのリースについて資産と負債を計上する。
購入していないのに、なぜ資産になるのか。
ポイントは、所有しているかどうかだけでなく、「使う権利」と「支払う義務」に注目することだ。
IFRS 16とは?
IFRS 16 Leasesは、リースの会計処理を定める基準だ。2019年1月1日以後に始まる事業年度から適用されている。
借りる側をLessee(借手)、貸す側をLessor(貸手)という。このシリーズでは、主に借手の会計処理を説明する。IFRS財団:IFRS 16の概要
例えば、会社がオフィスを5年間借りたとする。
会社は、その建物を所有していない。それでも、契約に基づいて5年間使う権利を持ち、その対価を支払う義務を負う。
この2つを財務諸表に表す。
| 計上するもの | 意味 |
|---|---|
| Right-of-use asset/使用権資産 | 契約期間中、その資産を使う権利 |
| Lease liability/リース負債 | 将来のリース料を支払う義務 |
建物そのものを買ったとして記録するわけではない。「その建物を使える権利」を資産として記録する。
なお、短期・少額のリースには例外がある。これは第3回で扱う。
そもそも、どんな契約がリースになる?
IFRS 16では、対価と引き換えに、一定期間、特定された資産の使用を支配する権利を得る契約がリースに当たる。
初めは、次の2つに分けて考えると分かりやすい。
- 何を使うのかが特定されているか。
- その資産の使用を、借手が支配しているか。
契約書に「リース」と書いてあるかだけでは決まらない。サービス契約という名前でも、リースが含まれている場合がある。英国歳入関税庁:リースの判定
① Identified asset:使う資産が特定されているか
例えば、「このビルの3階を借りる」「製造番号が指定された機械を借りる」という契約なら、対象の資産を特定しやすい。
ただし、契約書に資産が指定されているだけでは十分ではない。
貸手が使用期間を通じて別の資産に交換でき、しかも交換によって経済的な利益を得られるなら、実質的な代替権があるとして、特定された資産に該当しない場合がある。
例えば、サービス提供会社が自社の都合で機器を自由に入れ替え、入替費用を上回る効率化の利益を得られるような契約だ。
一方、故障時に修理のため交換できるというだけでは、通常、リースであることを否定しない。IFRS財団:資産の代替権に関する解説
② Right to control use:使用を支配しているか
使用を支配しているというためには、基本的に次の両方が必要になる。
| 確認すること | 平易にいうと |
|---|---|
| 使用から生じる経済的利益のほぼすべてを得る権利 | 使うことで得られる利益を、基本的に自社が受け取れるか。 |
| 使用を指図する権利 | どのように、何の目的で使うかについて、重要な判断ができるか。 |
単に機械のボタンを押す担当者が誰か、という話ではない。資産の使用から得られる利益を左右する判断に注目する。IFRS財団:リースの意思決定権
トラックを借りる場合と、配送を頼む場合
次の2つを比べてみよう。
| 契約 | 判断のポイント |
|---|---|
| 指定されたトラックを3年間、自社専用で使う。貸手に実質的な代替権はなく、自社が運ぶ荷物や運行先を決める。 | 特定の資産を使い、その使用を自社が支配しているため、リースに該当すると考えられる。 |
| 配送会社に、毎月一定量の荷物の配送を依頼する。車両の割当てや運行方法は配送会社が決める。 | 特定のトラックを使う権利を得ているわけではなく、通常は配送サービスの購入となる。 |
同じ「荷物を運ぶための支出」でも、手に入れているものが異なる。
なお、使い方が契約時点であらかじめ決まっている場合にも、借手の運転・操作の権利や、資産の設計への関与から支配を判定するルールがある。「用途が決まっているから、リースではない」とは限らない。
まずは、「特定のものを、自社の判断で使う権利を得ているか」と考えるところから始めよう。
次回は、その権利と支払義務を、いくらで財務諸表に載せるのかを数字で見ていく。


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