決算説明資料を読むと、「調整後営業利益」という数字が出てくることがある。
例えば、営業利益は200なのに、調整後営業利益は250と書かれている。
間違いとは限らない。ただ、「何を調整したら50増えたのか」は知りたいところだ。
IFRS 18では、一定の条件を満たす独自の利益指標について、その内容を財務諸表の注記で説明することを求めている。
MPMとは?
MPMは、Management-defined Performance Measuresの略。日本語では「経営者が定義した業績指標」と呼ばれる。
ただし、会社が使う指標すべてがMPMになるわけではない。
主に、次の条件を満たす「収益と費用の小計」が対象になる。
- 決算説明資料など、財務諸表の外で公に使っている。
- 会社全体の業績の一面について、経営者の見方を伝えるために使っている。
- IFRS 18が列挙する小計や、IFRSで表示・開示が要求される指標には当たらない。
例えば、独自に調整した営業利益がこれらの条件を満たせば、MPMになる。IFRS財団:MPMの定義
一方、顧客数や従業員数は収益・費用の小計ではない。フリー・キャッシュ・フローも、現行のIFRS 18のMPMの定義には含まれない。
「会社独自のKPI=すべてMPM」とは考えないようにしたい。IFRS財団:MPMの解説資料
調整後営業利益250は、どう計算された?
とある会社の例で考えてみる。
この会社の営業利益は200。その中には、次の2つが含まれている。
- 事業再編費用:60
- 事業で使っていた設備の売却益:10
会社は、この2つを除いた数字を「調整後営業利益」として公表しているとする。
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| IFRS 18に基づく営業利益 | 200 |
| 事業再編費用を除くため、足し戻す | +60 |
| 設備売却益を除くため、差し引く | −10 |
| 調整後営業利益 | 250 |
費用60は営業利益を減らしていたので、除くときは足し戻す。
利益10は営業利益を増やしていたので、除くときは差し引く。
ここまで分かると、「調整後営業利益250」という数字の中身を追える。
ただし、会社が独自指標から除いたからといって、その費用や利益がIFRSの損益計算書から消えるわけではない。営業利益200はそのままで、別の見方として250を示している。
注記には、何を書く?
MPMに該当する場合、関連情報を一つの注記にまとめて開示する。
読み手が確認したいのは、主に次の内容だ。
| 注記で確認すること | 今回の例で知りたいこと |
|---|---|
| 指標の意味と有用性 | なぜ再編費用と設備売却益を除くのか |
| 計算方法 | どの収益・費用を対象にしているのか |
| IFRSの利益との調整表 | 営業利益200から250へ、どうつながるのか |
| 各調整項目の税効果 | 調整によって税金にどのような影響があるのか |
| 各調整項目の非支配持分への影響 | 子会社の外部株主に帰属する部分があるか |
| 計算方法などを変えた場合の説明 | 前年と同じルールで比べられるか |
非支配持分とは、簡単にいえば、子会社の株式のうち親会社以外の株主が持っている部分だ。
上の200から250への表は、考え方を示す簡略版になる。実際のMPM注記では、税効果なども含め、必要な情報を開示する。IFRS財団:MPMの開示例と要求事項
調整後利益は、悪い数字なのか?
調整後利益のような表現は必ずしも利用者を惑わすものは言えない。
大きな事業再編があった年に、その影響を分けて見ることは、会社の状況を理解する助けになる。
ただし、会社が示す数字をそのまま受け取る前に、確認したいことがある。
「一時的な費用」が毎年出ていないか
毎年のように再編費用を除いているなら、実際には繰り返し発生するコストかもしれない。
「一時的」という説明が本当なのか、過去数年の実績を比べたい。
悪い項目だけを除いていないか
費用は足し戻すのに、一時的な利益は残しているなら、数字が良く見えやすくなる。
今回の例では、再編費用だけでなく設備売却益も除いている。こうした調整の考え方に一貫性があるかを見たい。
同じ名前でも、他社と計算が違わないか
A社とB社が両方「調整後営業利益」と呼んでいても、除外している項目が同じとは限らない。
IFRS 18の開示によって違いを調べやすくなるが、独自指標の計算方法そのものが全社で統一されるわけではない。
決算を見るときは、2つの利益を並べたい
決算を見るときは、まずIFRSに基づく営業利益を確認して、その後に調整後利益を見る。
そして、2つの差が何から生まれたかを注記で確認する。
調整後利益だけを見て判断するのも、独自指標だからと全部無視するのも、少しもったいないと思う。
IFRS 18によって、その数字を会社がどう作り、なぜ使っているかを、財務諸表の中で確かめやすくなる。決算を読む側としては、この説明を活用していきたい。


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