【SBRワンポイント】IFRS 13 公正価値は「会社の都合」ではなく「市場の視点」で考える

ACCA

問題文に「経営者が見積もった価格」「複数の市場価格」「土地の別の使い道」が出てきたら、IFRS 13を思い出そう。

特に対策しておきたいのが、CEOやFinance Directorが提案した評価について、Financial Accountantとして妥当性を検討するパターンだ。

「この資産はもっと高く評価できるはずだ」「この評価では利益が足りない」といった発言があれば、評価の根拠を確認する。さらに、意図的な操作や担当者への圧力があれば、Ethics(職業倫理)にもつながる。

1.どんな設問で使う?

例えば、次のような問われ方を想定しておこう。

Discuss whether the directors’ valuation of the property complies with IFRS 13.
不動産について、取締役の評価がIFRS 13に準拠しているか論じなさい。

Explain how the fair value of the asset should be determined.
資産の公正価値をどのように算定すべきか説明しなさい。

Discuss the ethical issues arising from the finance director’s proposal and recommend appropriate actions.
財務責任者の提案から生じる倫理上の問題を論じ、適切な対応を提案しなさい。

「公正価値を計算する」だけでなく、「経営者の説明のどこがおかしいか」「どう修正すべきか」まで練習しておきたい。

実際に、2018年12月のSBR公式解答でも、不動産の過大評価、借入契約の条件、経営者からの圧力が関連づけられている。ACCA公式解答:問2

2.まずは「市場の視点」を押さえる

公正価値は、測定日に、市場参加者の間で通常の取引を行った場合に、資産を売却して受け取る価格、または負債を移転するために支払う価格だ。

キーワードは、market participants(市場参加者)とexit price(出口価格)。

会社が買った価格や、経営者が希望する価格とは限らない。答案用には、次の短い表現を用意しておくと使いやすい。

The valuation should reflect market participants’ assumptions, rather than management’s intentions.
評価には、経営者の意図ではなく、市場参加者の仮定を反映すべきである。

そのうえで、問題文のどの仮定が不適切なのかを説明する。「市場の視点で考えるべき」と書くだけで終わらせない。IFRS Foundation:IFRS 13

3.問題文のヒントから、書く内容を選ぶ

問題文に出てくる状況答案で検討すること
複数の市場に異なる価格があるprincipal market(主要な市場)を確認する。単純に最高値を選ばない
売却手数料や輸送費がある取引費用は公正価値から控除しない。所在地が資産の特性である場合、輸送費は調整する
近隣物件の価格をそのまま使っている立地や状態など、対象資産との違いを反映する
土地を別の用途に使うと価値が上がるhighest and best use(最有効使用)を検討する
経営者が強気の予測を採用している市場参加者も採用する仮定か、裏づけがあるかを確認する
レベル2かレベル3か迷う評価全体に重要な、観察不能なインプットが使われていないか確認する

主要な市場は、その資産・負債について取引量と活動水準が最も大きい市場で、企業がアクセスできることも必要だ。主要な市場がなければ、most advantageous market(最も有利な市場)を検討する。ACCA:IFRS 13解説

4.経営者の都合が見えたら、Ethicsまで考える

例えば、財務責任者が「借入契約の条件に抵触するので、不動産の評価額を上げてほしい」と求めたとする。

ここで、評価額を上げるための合理的な証拠がなければ、会社の都合に合わせて数字を変えることはできない。

さらに「協力しなければ昇進に影響する」と言われた場合は、会計処理に加えて倫理上の問題を検討する。

視点このケースで書きたいこと
Accounting:会計借入契約への抵触を避けたいという事情は、公正価値を引き上げる根拠にならない
Ethics:倫理昇進を使った圧力は、客観性に対するintimidation threat(威圧の脅威)になる
Actions:対応評価根拠を確認して修正を求め、解決しなければ監査委員会など適切な上位機関に相談する

The threat to the accountant’s promotion creates an intimidation threat to objectivity.
昇進への不利益を示すことは、担当者の客観性に対する威圧の脅威を生じさせる。

「上司に相談する」と書く場合も、その上司が問題の当事者なら、別の報告先が必要だ。相談や判断の経緯を記録し、必要に応じて専門的助言を求めるところまで考えたい。ACCA:SBR試験官レポート・2020年6/7月

ただし、見積りの違いだけで不正と決めつけない。合理的な判断の違いなのか、誤りなのか、意図的な操作なのかを、問題文の事実から判断する。

5.土地は「会社がどう使うか」だけで判断しない

会社が土地を倉庫として使い続ける予定でも、市場参加者にとっては、住宅開発用地としての利用に、より高い価値があるかもしれない。

ここでは、非金融資産の最有効使用を検討する。

  • Physically possible:物理的に可能か
  • Legally permissible:法的に許容されるか
  • Financially feasible:財務的に実行可能か

用途規制や転用費用も考慮し、条件を満たすか確認する。別の用途の方が価値を最大化する証拠がなければ、現在の用途が最有効使用と推定される。ACCA:最有効使用の解説

「会社は売る予定がない」という情報だけで、公正価値の検討を終わらせないことが大切だ。

6.レベル1・2・3は「評価に使った材料」で判断する

分類押さえるポイント
Level 1活発な市場にある、同一の資産・負債の無調整の相場価格
Level 2レベル1以外の、直接・間接に観察可能なインプット
Level 3観察不能なインプット

「DCF法だからレベル3」とは限らない。分類するのは評価方法そのものではなく、評価に使ったインプットだ。

複数のレベルを使う場合は、評価全体に重要なインプットのうち、最も低いレベルに合わせる。

The measurement is classified as Level 3 because significant inputs are unobservable.
重要なインプットが観察不能であるため、この測定はレベル3に分類される。

実際の答案では、どの予測や仮定が観察不能なのかまで具体的に書こう。IFRS 13:公正価値ヒエラルキー

7.「どう測るか」と「どこに計上するか」を分ける

IFRS 13は、公正価値を「どう測るか」を定める基準だ。

公正価値で測定する必要があるか、評価差額を損益とOCIのどちらに計上するかは、IAS 16やIFRS 9など、対象となる基準で確認する。IFRS Foundation:IFRS 13の適用範囲

SBRでは、「経営者の評価は適切か → どの事実が根拠になるか → 正しい測定・処理は何か」の順で書く練習をおすすめする。倫理も問われたら、そこに「脅威と具体的な対応」を加えよう。

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