1年分のサービス料金を先に受け取った場合、その日に全額を売上にしてよいのだろうか。
反対に、サービスを提供したものの、まだ代金を受け取っていなければ、売上はゼロなのだろうか。
IFRS 15では、お金を受け取るタイミングと、売上を計上するタイミングを分けて考える。
前回の記事はこちら。
判断の中心は「支配の移転」
売上を認識する基本的なタイミングは、約束した商品やサービスの支配が顧客に移ったときだ。
支配(control)とは、その資産の使用を指図し、残りの便益のほぼすべてを得られることをいう。
認識の形は、大きく2つに分かれる。
| 認識の形 | 英語 | イメージ |
|---|---|---|
| 一時点で認識 | At a point in time | 商品の支配を引き渡したとき |
| 一定の期間にわたり認識 | Over time | サービスや工事の提供に応じて |
「請求書を出したから売上」「入金されたから売上」とは限らない。IFRS Foundation:収益認識の基本
期間にわたって認識する3つの条件
次のいずれかに該当すれば、一定の期間にわたって売上を認識する。
| 条件 | 例・確認すること |
|---|---|
| ① 履行と同時に、顧客が便益を受け取り消費する | 日々の清掃サービスなど |
| ② 作成・増価される資産を、その過程で顧客が支配する | 顧客が支配する建物の改修など |
| ③ 企業が資産を他に転用できず、かつ、完了済みの履行に対する強制可能な支払請求権がある | 顧客専用の設備などについて、契約条件と法的権利を確認する |
③は、2つの要件を両方満たす必要がある。
「特注品だから」「完成まで2年かかるから」という理由だけでは、期間にわたる認識にはならない。ACCA:期間にわたる収益認識
特に確認したいのが、顧客都合で契約が終了したときの支払だ。単に手付金を没収できるだけでなく、完了済みの履行に見合う対価を請求できるかを検討する。
一時点で認識する場合
期間にわたって認識する条件を満たさなければ、支配が移った一時点で売上にする。
判断の手がかりには、次のようなものがある。
- 代金を受け取る現在の権利がある。
- 法的所有権が顧客に移っている。
- 商品を顧客が占有している。
- 所有に伴う重要なリスクと経済価値が移っている。
- 顧客が検収している。
これは、すべてにチェックが付くまで売上にできないという意味ではない。取引全体から支配の移転を判断する。ACCA:支配の移転の判断
例:1年分の料金を先にもらった場合
1月1日に、1年間の保守料金12万円を受け取ったとする。サービスは毎月均等に提供する。
| 時点 | 累計売上 | 契約負債 |
|---|---|---|
| 入金直後 | 0円 | 12万円 |
| 1月末 | 1万円 | 11万円 |
| 3月末 | 3万円 | 9万円 |
| 12月末 | 12万円 | 0円 |
受け取った12万円には、これからサービスを提供する義務が対応している。そのため、最初は契約負債として記録し、提供するにつれて売上へ振り替える。
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 入金時 | 現金 12万円 | 契約負債 12万円 |
| 毎月の提供時 | 契約負債 1万円 | 売上 1万円 |
契約資産・売掛金・契約負債の違い
| 項目 | どんな状態か |
|---|---|
| 契約資産:Contract asset | 商品・サービスは提供済みだが、対価を受け取る権利に、時間の経過以外の条件が残っている |
| 売掛金などの債権:Receivable | 対価を受け取る権利が無条件となり、支払期日を待つ状態 |
| 契約負債:Contract liability | 対価を受け取った、または支払期限が到来したが、提供義務が残っている |
例えば、機械と研修を別々の履行義務として販売したとする。
機械を引き渡して売上を認識しても、研修完了まで代金を受け取る権利が無条件にならないなら、機械分は契約資産になり得る。
研修が終わって権利が無条件になれば、売掛金などの債権へ振り替える。
請求書を発行したかどうかだけでなく、「何の条件が残っているか」を見ることが大切だ。ACCA:契約資産・契約負債
工事の進捗に応じた売上を計算する
期間にわたる認識の条件を満たす工事について、次の前提を置く。
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| 契約価格 | 1,000万円 |
| 見積総原価 | 800万円 |
| 累計発生原価 | 320万円 |
原価の割合が履行の進み具合を適切に表すなら、進捗率は40%となる。
320万円 ÷ 800万円=40%
累計売上は、1,000万円 × 40%=400万円だ。前期までに150万円を計上していれば、当期の売上は250万円となる。
ただし、異常な浪費など、履行の進捗を表さない原価まで単純に含めない。進捗度は、実際にどこまで約束を果たしたかを表す方法で測る。IFRS 15:進捗度の測定
売上額、請求額、入金額は、それぞれ違っていてよい。何を表す数字なのかを分けて読むと、財務諸表も理解しやすくなる。
次回の記事はこちら。


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