IFRS解説第一回の記事はこちら。
IFRS 16では、多くのリースについて「使う権利」と「支払う義務」を計上する。
では、3年間で合計300万円を支払う契約なら、資産と負債を300万円ずつ計上するのだろうか。
実は、将来払うお金をそのまま足すわけではない。まずは、将来の支払額を「現在価値」に直す。
リース負債は、これから払うお金の現在価値
Lease liability(リース負債)は、開始日時点でまだ支払っていないリース料の現在価値を基に計算する。
現在価値とは、将来のお金を、利率を使って現在の金額に換算したものだ。
例えば、年5%で運用できるなら、現在の約95.24万円は1年後に100万円になる。逆にいえば、1年後に払う100万円の現在価値は約95.24万円だ。
実際の割引率には、容易に算定できる場合はリースの計算利子率を使う。それが難しい場合は、借手が類似条件で資金を借りる場合の利率であるIncremental borrowing rate(追加借入利子率)を使う。英国歳入関税庁:当初測定
年間100万円を、3年間支払う例
説明のため、次の契約を考える。
- オフィスを3年間借りる。
- 毎年末に100万円を支払う。
- 割引率は年5%。
- 前払金、契約獲得の直接費用、原状回復費用などはない。
- 所有権の移転や購入オプションはない。
支払額の現在価値は、次のようになる。
| 支払時期 | 支払額 | 現在価値の計算 | 現在価値 |
|---|---|---|---|
| 1年後 | 100万円 | 100 ÷ 1.05 | 約95.24万円 |
| 2年後 | 100万円 | 100 ÷ 1.05² | 約90.70万円 |
| 3年後 | 100万円 | 100 ÷ 1.05³ | 約86.38万円 |
| 合計 | 300万円 | 約272.32万円 |
開始時に計上するリース負債は、約272.32万円となる。
この例では、使用権資産も同じ約272.32万円だ。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 使用権資産 272.32万円 | リース負債 272.32万円 |
計上する時点は、単に契約書へ署名した日ではなく、借手が資産を使用できるようになるリース開始日だ。
使用権資産とリース負債は、いつも同額ではない
Right-of-use asset(使用権資産)の当初の金額には、リース負債に加え、開始日以前の支払、適格な当初直接コスト、原状回復義務などが関係する。
貸手から受け取るインセンティブも調整する。ACCA:IFRS 16の使用権資産の測定
例えば、開始時に前払したリース料があれば、それは「これから払う義務」ではないため、開始時のリース負債には含めない。一方、使用権資産の金額には含まれる。
「使用権資産=リース負債」は、追加の調整がない場合の関係だと覚えておこう。
その後は、資産と負債を別々に動かす
開始時に計上した後は、基本的に次のように処理する。
| 項目 | その後の動き |
|---|---|
| 使用権資産 | 使う期間にわたって減価償却する。必要に応じて減損も検討する。 |
| リース負債 | 利息分だけ増え、リース料の支払によって減る。 |
この例では、使用権資産を3年間で均等に減価償却する。
年間の減価償却費は、272.32万円 ÷ 3年 ≒ 90.77万円となる。
一方、リース負債の1年目の利息は、272.32万円 × 5% ≒ 13.62万円だ。
したがって、1年目末の支払後の負債は、
272.32万円 + 13.62万円 − 100万円 = 185.94万円
となる。
同じ計算を続けると、次のようになる。
| 年 | 年初の負債 | 利息 | 支払額 | 年末の負債 |
|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 272.32万円 | 13.62万円 | 100万円 | 185.94万円 |
| 2年目 | 185.94万円 | 9.30万円 | 100万円 | 95.24万円 |
| 3年目 | 95.24万円 | 4.76万円 | 100万円 | 0万円 |
端数は表示上丸めている。負債を利息で増やし、支払で減らすのが基本的な動きだ。IFRS財団:借手の測定に関する資料
「100万円払った」と「100万円の費用」は違う
この例の1年目には、現金を100万円支払う。しかし、損益計算書に計上する費用は次の組合せだ。
| 費用 | 金額 |
|---|---|
| Depreciation/減価償却費 | 約90.77万円 |
| Interest expense/利息費用 | 約13.62万円 |
| 合計 | 約104.39万円 |
支払額と、その年の費用は一致しない。
また、このように支払額が一定で、資産を均等に償却する例では、負債が減るにつれて利息も減る。そのため、減価償却費と利息の合計は、前半ほど大きくなる。
まずは「資産は減価償却」「負債は利息と返済」と、2本に分けて考えると理解しやすい。
なお、所有権が移転する場合や、購入オプションの行使が合理的に確実な場合などは、減価償却期間の考え方が変わる。すべてのリースを契約年数で単純に割るわけではない。


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