【IFRS 13 基礎解説第1回】公正価値とは?「今、市場で売るなら」を考える

IFRS解説

Fair value(公正価値)は、IFRSを学ぶと何度も登場する言葉だ。

「時価のこと」と理解すると入りやすい。ただし、公正価値には、いつの価格か、誰の視点か、どの市場かというルールがある。

その測り方を定めるのが、IFRS 13 Fair Value Measurement(公正価値測定)だ。

公正価値とは何か

公正価値は、測定日に、市場参加者の間で行われる秩序ある取引において、資産を売却して受け取る価格、または負債を移転するために支払う価格をいう。

まず資産について、次のように捉えると分かりやすい。

「今、市場の通常の取引で、この資産を売るならいくらか」。

買ったときの価格でも、自社が希望する売却価格でもない。測定日時点の市場参加者の考え方を反映する。IFRS財団:IFRS 13の概要

定義を4つに分ける

キーワード意味
Measurement date/測定日過去の取得日ではなく、評価する日現在の条件を見る。
Market participants/市場参加者特定の会社だけの事情ではなく、市場で取引する人たちの前提を使う。
Orderly transaction/秩序ある取引通常の販売活動を経た取引を想定する。強制的な清算や投げ売りを前提にしない。
Exit price/出口価格資産を売却して受け取る価格、または負債を他者へ移転するために支払う価格を見る。

例えば、100万円で買った株式が、測定日に活発な市場で120万円で取引されているとする。

同一の株式の市場価格をそのまま使える状況なら、公正価値は120万円を基に測定する。取得価格が100万円だったことは、現在の公正価値を100万円に固定する理由にはならない。

IFRS 13は、すべてを公正価値にする基準ではない

ここは混同しやすい。

IFRS 13は、公正価値の測定が必要な場面で、その測り方を定める基準だ。すべての資産や負債を、公正価値で評価するよう求めているわけではない。

判断すること主に参照する基準
公正価値を使う必要があるかIFRS 9、IAS 40など、対象となる項目の個別基準
公正価値をどう測るかIFRS 13
評価差額を損益やOCIのどちらに計上するか対象となる項目の個別基準

また、似た測定でも、IAS 2の正味実現可能価額やIAS 36の使用価値は、公正価値そのものではない。

どの市場の価格を使う?

同じ資産でも、市場によって価格が違う場合がある。

その場合、まずPrincipal market(主要な市場)を確認する。対象の資産・負債について、取引量と取引活動が最も大きい市場だ。

主要な市場がない場合は、Most advantageous market(最も有利な市場)を使う。資産なら、取引コストや輸送費を考慮した後の受取額が最大になる市場を指す。

いずれも、企業が測定日にアクセスできる市場である必要がある。

主要な市場が存在するなら、別の市場の方が高く売れるとしても、原則として主要な市場の価格を使う。ACCA:市場の選択と公正価値

取引コストと輸送費は、扱いが違う

資産を売るときには、仲介手数料や輸送費がかかることがある。

コスト公正価値の測定での扱い
Transaction costs/取引コスト公正価値から差し引かない。取引のための費用であり、資産自体の特性ではないため。
Transport costs/輸送費所在地が資産の特性である場合、市場までの輸送費を調整する。

例えば、倉庫にある商品について、主要な市場での価格が100、そこまでの輸送費が4、販売手数料が3だったとする。

所在地を反映する必要があるなら、公正価値は次のようになる。

100 − 4 = 96

販売手数料3は、公正価値から差し引かない。実際の手取り額93とは異なる。

「最も有利な市場を選ぶとき」は取引コストも考えるが、「その市場で公正価値を測るとき」は取引コストを差し引かない。この2つを分けて考えよう。IFRS財団:取引コストと輸送費の違い

次回は、市場にそのまま使える価格がない場合の評価方法を見ていく。

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