上場株式なら、市場価格を確認しやすい。
しかし、非上場株式や特殊な機械、独自性の高い不動産には、そのまま使える価格がないこともある。
それでも、公正価値を測れないとは限らない。IFRS 13では、状況に合う評価方法を使って、市場参加者が付ける価格を見積もる。
公正価値を求める3つのアプローチ
| 評価アプローチ | 基本的な考え方 | 具体例 |
|---|---|---|
| Market approach/マーケット・アプローチ | 同一または類似するものの市場取引を参考にする。 | 類似企業の取引倍率や、近隣の不動産の取引価格を使う。 |
| Income approach/インカム・アプローチ | 将来の収益やキャッシュフローを、現在の金額に換算する。 | 将来キャッシュフローを割り引くDCF法を使う。 |
| Cost approach/コスト・アプローチ | 同じサービス提供能力を、現在置き換えるために必要な金額を考える。 | 同等の設備の再調達コストから、劣化や陳腐化を調整する。 |
どれを使うかは、資産の性質や利用できる情報によって変わる。複数の方法を使い、結果を比較・検討する場合もある。
例えば非上場株式について、IFRS財団の教育資料では、類似企業との比較や将来キャッシュフローを使う方法などが紹介されている。IFRS財団:非上場株式の公正価値に関する教育資料
① Market approach:似たものと比べる
ある倉庫を評価したいが、その倉庫自体の取引価格はないとする。
近隣の類似する倉庫が売買されていれば、その価格が手掛かりになる。ただし、面積、築年数、立地、設備の状態が違うなら、その差を調整する必要がある。
「似た物件が1億円だったから、この物件も1億円」と、そのまま決めるわけではない。
何が似ていて、何が違うのか。その違いを市場参加者が価格にどう反映するかを考える。
② Income approach:将来のお金を現在に直す
説明を単純にするため、市場参加者が、ある権利から1年後に110万円を受け取ると見込み、適切な割引率を10%と考える場合を想定する。
現在価値は、
110万円 ÷ 1.10 = 100万円
となる。
実際には、複数年のキャッシュフロー、成長率、リスクなどを検討する。キャッシュフローと割引率の両方に同じリスクを重複して織り込まないことも重要だ。
また、会社の経営陣が「これくらい稼ぎたい」と考える数字を、そのまま使うわけではない。公正価値では、市場参加者が使う前提に合わせる。
DCFを使えば、使用価値と同じ?
同じではない。
公正価値と、IAS 36のValue in use(使用価値)は、どちらも将来キャッシュフローの割引計算を使うことがある。しかし、評価の視点が異なる。
| 項目 | 評価の視点 |
|---|---|
| 公正価値 | 市場参加者の前提で、資産を売却する価格を考える。 |
| 使用価値 | その企業が資産を使用し、最終的に処分することで得るキャッシュフローを、IAS 36のルールに従って考える。 |
計算の形が似ていても、使う前提まで同じとは限らない。IFRS財団:公正価値の市場参加者の視点、IAS 36の概要
③ Cost approach:「昔いくらで買ったか」ではない
Cost approachは、Historical cost(歴史的原価)とは異なる。
過去の購入額ではなく、現在、同じサービス提供能力を手に入れるにはいくら必要かを考える。
例えば、同じ能力を持つ新しい機械が500万円でも、評価対象の機械が古く、性能面でも劣るなら、その状態を反映する。
新品価格を使って終わりではなく、物理的な劣化、技術的な陳腐化、経済環境の変化などを考慮する。AASB 13:コスト・アプローチと陳腐化の説明
非金融資産では「最有効使用」も考える
土地や建物などの非金融資産では、Highest and best use(最有効使用)を考慮する。
市場参加者にとって、その資産の価値を最大にする使い方は何か、という視点だ。
ただし、次の3条件を満たす必要がある。
| 条件 | 確認すること |
|---|---|
| Physically possible/物理的に可能 | 土地の広さや建物の構造から、実現できるか。 |
| Legally permissible/法的に許容される | 用途地域や建築規制などに反しないか。 |
| Financially feasible/財務的に実行可能 | 転用費用などを考慮しても、市場参加者が必要とする収益を得られるか。 |
例えば、現在は駐車場として使う土地でも、条件を満たす住宅用地としての利用の方が価値を高めることがある。
ただし、住宅が完成した後の販売価格を、そのまま土地の価値にするわけではない。開発費用や必要な利益なども考慮する。
会社が今の使い方を続けたいと思っていても、それだけで市場参加者にとっての別の利用方法を除外できない。一方、別の使い方の方が価値を高めるという証拠がなければ、現在の使用が最有効使用と推定される。IFRS 13:非金融資産の最有効使用
次回は、その評価に使った情報を、レベル1・2・3にどう分類するかを説明する。


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