「資産は会社が持っているもの」「負債は借金」。
会計を学び始めた段階では、この理解でもイメージはつかめる。しかし、それだけでは説明できない取引もある。
借りている建物を使う権利は、なぜ資産になるのか。現金を受け取ったのに、なぜ収益にならないことがあるのか。
Conceptual Frameworkの定義から考えてみよう。
前回の記事はこちら。
財務諸表を構成する5つの要素
次の表は、定義を理解しやすく整理したものだ。
| 要素 | 基本的な意味 |
|---|---|
| Asset/資産 | 過去の出来事の結果として企業が支配している、現在の経済的資源。 |
| Liability/負債 | 過去の出来事の結果として生じた、経済的資源を移転する現在の義務。 |
| Equity/資本 | 資産から負債を差し引いた残りに対する持分。 |
| Income/収益 | 資産の増加や負債の減少による資本の増加。ただし、所有者からの出資を除く。 |
| Expenses/費用 | 資産の減少や負債の増加による資本の減少。ただし、所有者への分配を除く。 |
経済的資源とは、経済的利益を生み出す可能性のある「権利」をいう。IFRS財団:Conceptual Framework解説資料
資産は「物」だけではない
売掛金は、顧客から代金を受け取る権利だ。リースの使用権資産は、契約に従って建物や機械を使う権利だ。
資産を考えるときは、目に見える物があるかだけでなく、会社がどのような権利を持っているかに注目する。
また、将来必ず利益が出ることまで求めているわけではない。利益を生む可能性のある権利が存在するかという問題と、それを財務諸表に載せるかという問題は、分けて考える。
例えば、会社が購入した特許から利益を得られるかは不確実でも、特許に関する権利そのものがなくなるわけではない。
一方、「来年買いたい機械」は、購入した機械とは違う。欲しい、買う予定があるというだけでは、現在その機械を支配していることにはならない。
負債は「これからお金を使う予定」とは違う
負債では、現在の義務があるかが重要になる。
例えば、すでに受け取った商品の代金を来月払うなら、買掛金という義務がある。
しかし、来年広告を出す予定があるだけなら、それだけで広告費の負債を計上するわけではない。計画している支出と、すでに生じた義務は別だ。
また、義務は必ずしも借入金や書面の契約だけから生じるものではない。企業の慣行や公表した方針などから、実際上回避できない場合も義務とする場合がある。
現金が増えても、収益とは限らない
会社の銀行口座に100万円が入ったとする。何が起きたかによって、会計上の意味は異なる。
| 100万円が入った理由 | 基本的な見方 |
|---|---|
| 銀行から借りた | 現金と借入金が増える。収益ではない。 |
| 株主が出資した | 現金と資本が増える。収益ではない。 |
| 以前の売掛金を回収した | 売掛金が現金に変わる。回収時に再び収益を計上しない。 |
| 商品を販売し、その場で代金を受け取った | 収益認識の要件を満たせば、売上を計上する。 |
同じ入金でも、「借りた」「出資された」「回収した」「売った」では違う。
費用も同様だ。借入金の元本を返済すると現金は減るが、対応する負債も減るため、その返済額がそのまま費用になるわけではない。
Incomeは、売上だけを意味しない
Conceptual FrameworkのIncomeは、売上などのRevenueだけでなく、利益・利得に当たるものも含む広い概念だ。
そのため、Incomeを見て、すべて「売上」と読み替えないようにしたい。
資産・負債の増減から収益や費用を捉えると、「現金が動いたか」だけでは分からない会計処理のつながりが見えてくる。
次回は、定義に当てはまる項目を、実際に財務諸表へ載せるか、いくらで載せるかを説明する。


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