【IFRS 15 基礎解説】第3回 売上はいくらになる? 値引き・返品・長期の後払い

ACCA

契約書に100万円と書いてあれば、売上も必ず100万円になるのだろうか。

実際には、数量に応じた値引き、返品、成功報酬、長期の後払いなどによって、売上として認識する金額が変わる。

今回は、5ステップのうち「取引価格を算定する」部分を詳しく見ていく。

前回の記事はこちら。

変動対価とは?

変動対価(variable consideration)は、契約上の対価が一定ではない場合の、その変動部分だ。

例金額が変わる理由
成功報酬目標を達成すると追加報酬が発生する
数量リベート購入数量が一定水準を超えると値引きされる
遅延ペナルティー納期に遅れると受取額が減る
返品権返品により返金する可能性がある

金額が未確定だからといって、すべて確定まで待つわけではない。合理的に見積もったうえで、取引価格に含められる範囲を判断する。ACCA:変動対価の解説

見積方法は2つある

方法考え方
Expected value:期待値起こり得る結果を、確率で重みづけする
Most likely amount:最も可能性の高い金額起こり得る結果のうち、最も可能性が高い金額を選ぶ

例えば、追加報酬が0万円・10万円・20万円となる確率を、それぞれ20%・50%・30%と見積もった場合、期待値は11万円になる。

0万円 × 20% + 10万円 × 50% + 20万円 × 30%=11万円

一方、「条件を達成すれば20万円、未達ならゼロ」という取引では、最も可能性の高い金額を用いる方が適切な場合がある。

都合のよい金額になる方法を選ぶのではなく、その契約の結果をより適切に予測する方法を使う。

見積もった金額を、そのまま入れてよいとは限らない

変動対価には、収益の過大計上を防ぐための制限がある。

不確実性が解消したときに、認識済みの累計収益について重大な戻入れが生じない可能性が非常に高い範囲に限って、取引価格に含める。

例えば、追加報酬の期待値が11万円でも、結果が天候や第三者の判断に大きく左右されるなら、その全額を含められるとは限らない。

「見積りを計算する」と「その見積りを取引価格に含められるか判断する」は、別の作業だ。ACCA:変動対価の制限

返品できる商品を販売した場合

1個1万円の商品を100個販売し、100万円を受け取ったとする。

返品実績などから5個の返品を見込み、その見積りが変動対価の制限も満たしている場合、次のように処理する。

内容金額
現金100万円
売上95万円
返金負債5万円

返金する見込みの5万円は、売上に含めない。

また、返品された商品を回収する権利も、資産として認識する。

仮に1個の原価が6,000円で、回収費用も価値の低下もないなら、回収権の資産は3万円、売上原価は57万円となる。

内容計算金額
回収権の資産6,000円 × 5個3万円
売上原価6,000円 × 95個57万円

返金負債は販売価格を基礎にするが、回収権の資産は商品の元の帳簿価額を基礎にする。両者は同じ金額ではない。

返品の見積りは、その後も更新する。IFRS 15:返品権付き販売

長期の後払いには利息が含まれることもある

商品を今渡し、2年後に121万円を受け取る契約を考える。

現金販売価格は100万円。差額21万円が資金提供への対価に当たり、年10%の利率が適切だとする。

時点商品の売上金融収益
商品の引渡時100万円―
1年目―10万円
2年目―11万円
合計100万円21万円

2年後に受け取る121万円を、すべて商品の売上にはしない。

こうした要素を、重要な金融要素(significant financing component)という。顧客から長期間前払いを受け、企業が資金提供を受けている場合には、反対に金融費用が生じることもある。ACCA:金融要素を含む契約

ただし、支払時期のずれがあれば必ず利息を計算するわけではない。例えば、支払の留保が契約の適切な履行を確保するためであるなど、金融以外の理由も検討する。

また、商品・サービスの移転と支払の間が1年以内と見込まれる場合には、金融要素を調整しない実務上の便法がある。ACCA:取引価格の算定

契約金額を見るときには、「最終的に受け取る権利がある金額か」「商品の対価以外の要素が混ざっていないか」を確認したい。

次回の記事はこちら。


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