IFRS 18では、損益計算書の収益・費用を5つの区分に分類する。
名前だけを覚えるより、一つの会社の数字を上から追ってみるほうが分かりやすい。
今回は、製品を作って販売する会社を例に考えてみる。
損益計算書の5区分
| 区分 | 英語 | 今回の製造会社で考える例 |
|---|---|---|
| 営業 | Operating | 売上、売上原価、人件費、事業で使う設備の減価償却費など |
| 投資 | Investing | 預金の受取利息、事業とは独立して収益を生む投資からの収益など |
| 財務 | Financing | 借入金の支払利息など |
| 法人所得税 | Income taxes | IAS 12の対象となる法人所得税の費用・収益 |
| 非継続事業 | Discontinued operations | IFRS 5の要件を満たす非継続事業の税引後損益 |
この表は、投資や顧客への融資を主な事業としていない会社の例だ。IFRS財団:IFRS 18の影響分析
非継続事業は、「何かを売却したら全部ここに入る」という区分ではない。事業の廃止・売却などについて、IFRS 5の条件を満たす必要がある。
数字を並べてみる
次の数字を使って、簡単な損益計算書を作る。単位は百万円で、その他の包括利益は省略している。
| 区分・小計 | 項目 | 金額 |
|---|---|---|
| 営業 | 売上高 | 1,000 |
| 営業 | 売上原価 | −600 |
| 営業 | 販売費・管理費 | −200 |
| 営業 | 事業で使っていた機械の売却益 | +20 |
| 小計 | 営業利益 | 220 |
| 投資 | 預金の受取利息 | +10 |
| 小計 | 財務及び法人所得税前利益 | 230 |
| 財務 | 借入金の支払利息 | −30 |
| 小計 | 税引前利益 | 200 |
| 法人所得税 | 法人所得税費用 | −60 |
| 小計 | 継続事業からの利益 | 140 |
| 非継続事業 | 非継続事業からの損失〈税引後〉 | −15 |
| 合計 | 当期利益 | 125 |
注目したいのは、営業利益220と、財務及び法人所得税前利益230だ。
後者の英語は、Profit before financing and income taxes。営業利益に投資区分の損益を加えたものになる。
IFRS 18では、この2つの小計を原則として表示する。ただし、顧客への融資を主な事業とする一部の会社には例外がある。IFRS財団:利益の小計と主な事業活動
機械の売却益が「営業」に入るのはなぜ?
今回の例では、事業で使っていた機械の売却益20を営業区分に入れている。
「機械の売却は毎年あるわけではないのに、営業なの?」と思うかもしれない。
ここが、IFRS 18で気をつけたいところだ。
営業区分は、「毎年繰り返す本業の収益・費用だけ」を集めたものではない。他の4区分に分類されない収益・費用を含む区分であり、一時的な項目も入り得る。残り物を置くようなイメージだ。
今回のような事業用機械の売却益も、その例になる。IFRS財団:IFRS 18本文・B48項
つまり、営業利益220を見て、「毎年安定して220稼げる会社だ」とすぐに判断するのは早い。中には機械の売却益20が入っている。
営業利益の定義がそろっても、その中身を読むことは引き続き大切だ。
キャッシュ・フロー計算書と混同しない
営業・投資・財務という名前は、キャッシュ・フロー計算書にも出てくる。ただし、損益計算書と同じルールで分類するわけではない。
例えば、今回の機械の売却益20は、損益計算書では営業区分になる。一方、機械を売って受け取った現金は、通常、キャッシュ・フロー計算書では投資活動に分類される。
売却益と、受け取った現金の総額も別の数字だ。
「投資キャッシュ・フローだから、損益も投資区分」と機械的につなげないようにしたい。
銀行などでは、利息の扱いが変わる
製造会社にとって、預金の受取利息は通常、投資区分になる。
しかし、銀行は顧客にお金を貸して利息を得ること自体が主な事業だ。そのため、顧客向け貸付からの利息収益などは営業区分に入る。
IFRS 18では、投資や顧客への融資が主な事業であるかを判断し、それに応じたルールを適用する。IFRS財団:特定の主な事業活動
項目名だけで分類を暗記する前に、「この会社は何で稼ぐ会社なのか」を確認する。
次回は、会社が独自に公表する「調整後利益」を取り上げる。今回の営業利益に含まれる一時的な項目を、会社が別の指標で除いた場合、どのような説明が必要になるのかを見ていきたい。


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