IFRS 16解説第2回はこちら。
IFRS 16では、多くのリースについて使用権資産とリース負債を計上する。
ただし、すべての契約で同じ計算をするわけではない。短期・少額のリースには簡便な処理があり、契約を途中で変えた場合にも対応が必要になる。
今回は、その例外と応用を整理する。
① 短期リース:12か月以内なら免除できる?
Short-term lease(短期リース)は、開始日時点のリース期間が12か月以内で、購入オプションを含まないリースをいう。
条件を満たす場合、使用権資産とリース負債を計上せず、リース料を原則として期間にわたり均等に費用計上する方法を選べる。
ただし、契約書に「1年間」と書いてあるだけでは決まらない。
例えば、1年契約に延長オプションがあり、その行使が合理的に確実なら、延長期間をリース期間に含める。その結果、短期リースの免除を使えない場合がある。
免除は自動適用ではなく、選択する処理だ。短期リースについては、原資産の種類ごとに選択する。IFRS 16基準本文:認識の免除とリース期間
② 少額資産のリース:月額料金ではなく、資産の価値を見る
Low-value asset(少額資産)のリースにも、資産・負債の計上を省略できる選択肢がある。
ここで見るのは、毎月の支払額ではなく、その資産が新品である場合の価値だ。
| 例 | 考え方 |
|---|---|
| 一般的なパソコン、電話、小型のオフィス家具 | 少額資産に該当する可能性がある。 |
| 高価な機械を、月額1万円で借りる | 月額が安いだけでは、少額資産にならない。 |
| 古くなって価値が下がった自動車 | 新品時には通常少額ではないため、少額資産の免除には該当しない。 |
会社の規模に対して小さいかどうかではない。大企業だから高額な設備も少額扱いにできる、という制度ではない。
また、他の資産への依存度が高い部品などは、単品の価格だけで判断しない。少額資産の免除は、リースごとに選択できる。ACCA:短期・少額リースの解説
③ Lease modification:途中で契約を変更したら?
オフィスを借りている途中で、追加のフロアを借りる。あるいは、使う面積を減らすことに合意する。
このように、当初の契約条件にはなかった使用範囲や対価の変更を、Lease modification(リースの条件変更)という。
まずは、追加部分を「別のリース」として扱えるかを考える。
| 変更内容 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 追加の資産を使う権利が増え、追加料金も、その権利を単独で借りる場合の価格に見合う | 別のリースとして処理する。 |
| 別のリースとする条件を満たさない | 既存のリース負債を再測定し、使用権資産などを調整する。 |
例えば、新しいフロアを追加し、その追加料金も独立した賃貸価格に見合うなら、追加部分を新たなリースとして扱う。IFRS財団:リース条件変更の解説
一方、別のリースとして扱わない変更では、変更後の支払額と変更時点の割引率を使って負債を再計算する。
面積の縮小など、使用範囲が減る場合には、使用権資産と負債の一部を取り除く処理が必要になり、損益が発生することもある。IFRS 16第44〜46項
なお、当初から契約に含まれる物価指数連動の賃料改定などは、契約を新たに変更した場合とは区別する。支払額が変われば、すべてLease modificationになるわけではない。
④ Sale and leaseback:売った後も、そのまま使う
Sale and leaseback(セール・アンド・リースバック)は、会社が資産を売却し、その資産を買手から借りて使い続ける取引だ。
例えば、自社ビルを売却して資金を得ながら、オフィスとしての利用は続ける。
ただし、売買契約を結んだからといって、必ず会計上も売却になるわけではない。最初に、IFRS 15に照らして資産の支配が移転し、売却として認められるかを判断する。
| 判定 | 売手であり借手でもある会社の処理 |
|---|---|
| 売却として認められる | 元の資産を帳簿から取り除き、借りて使い続ける部分について使用権資産を計上する。売却益は、買手へ移転した権利に対応する部分だけを認識する。 |
| 売却として認められない | 元の資産を帳簿に残し、受け取った資金を金融負債として処理する。 |
この区別によって、取引を売却として扱うのか、資金調達として扱うのかが変わる。英国歳入関税庁:セール・アンド・リースバック
売却益を、すべて計上できるとは限らない
帳簿価額6,000万円の建物を1億円で売り、その後も借りて使う例を考える。
ここでは、次を仮定する。
- 会計上も売却として認められる。
- 売却価格1億円は公正価値と等しい。
- リース料は市場条件で設定されている。
- 借り戻す支払額の現在価値は4,000万円で、保持する使用権の割合を40%として測定する。
単純な差額は、1億円 − 6,000万円 = 4,000万円だ。
しかし、40%に相当する使用権を保持しているため、売却益として認識するのは、移転した60%に対応する部分となる。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 使用権資産 | 元の帳簿価額6,000万円 × 40% | 2,400万円 |
| 認識する売却益 | 差額4,000万円 × 60% | 2,400万円 |
受け取った現金1億円と、認識する売却益2,400万円は、まったく違う金額だ。
「売却して資金を得た」「利益が出た」「その後も使う権利が残る」を分けて考えると理解しやすい。売却価格やリース料が市場条件と異なる場合には、追加の調整が必要になる。ACCA:セール・アンド・リースバックの解説
また、2024年から適用される改訂では、売却後のリース負債の測定について、保持している使用権に対応する損益を認識しないようにするルールが明確化されている。特に変動リース料を含む取引では、その後の測定にも注意が必要だ。IFRS財団:改訂の概要
初めは、短期・少額は「簡便な処理を選べるか」、契約変更は「別のリースか、既存契約の見直しか」、セール・アンド・リースバックは「本当に売却か」という順番で整理しよう。


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